フリーランスの消費税の納税義務と計算方法

Last Updated on 2016年12月12日

フリーランスの方にとって消費税は

「いつから納めなければならないのか」

「どのくらい納めなければいけないのか」

など様々な心配の種となっているのではないでしょうか。

今日は個人事業主の消費税の納税義務や計算方法についてまとめてみます。

フリーランスはいつから消費税の納税義務が発生するか?

フリーランスの場合、前々年の売上高が1000万円を超える場合に消費税の納税義務が発生します。

従って、事業を開始した初年度と、2年目は基本的に消費税は免除されます。(ただし前年の6月30日までの売上高又は給与の額が1000万円を超えるなど一定の場合は免除されません)

売上高が1000万円を超えたら、2年後に消費税の納税義務が発生するということを踏まえ、様々な準備(簡易課税の検討や、処理方法(税込・税抜処理等)の検討など)を始めると良いでしょう。

途中で法人成りした場合の納税義務は?

フリーランスが途中で法人成りした場合には納税義務はどうなるのでしょうか。

税法上、個人と法人とは別のものと考えますので、それぞれの消費税免除期間を把握することになります。

例えば、2年目に売上高が1000万円を超えた場合、通常4年目に消費税の納税義務が発生することになります。

ここで、3年目の途中で法人成りした場合には、それまでのフリーランスとしての売上高は納税義務の判定上考慮外となります。

従って3年目が法人としての1年目となり、その後の2年間(4年目、5年目)は基本的に消費税の納税義務は免除されます。(資本金が1000万円以上その他一定の場合を除く)

 

消費税の計算方法には原則課税と簡易課税がある

消費税は、基本的に預かった消費税から支払った消費税を差し引くことによって計算します。

支払った消費税の計算方法には、計上の都度消費税を認識し厳密に計算する原則課税と、簡便な方法である簡易課税とがあります。

前々年度の売上高が5000万円以下であるフリーランスは、簡易課税を選択することができます。

簡易課税制度とは、支払った消費税額を厳密に都度計算するのではなく一定の「みなし仕入率」を使って計算する方法です。

従って、簡易課税制度を使えば期末に仕入れ額(原価や費用など)を集計しその集計額にみなし仕入率を乗じることによって支払った消費税を一括で計算することができます。

この「みなし仕入れ率」ですが、業種によって率が下記のとおり異なります。

第1種 卸売業:90%

第2種 小売業:80%

第3種 建設業・製造業・農林漁業等:70%

第4種 上記・下記以外の事業:60%

第5種 金融保険業・運輸通信業・サービス業(飲食店業を除く):50%

第6種 不動産業:40%

卸売業などは仕入れるものがほとんど課税仕入れ(消費税がかかる取引)なので率が高くなっています。

その反面、不動産業は土地などの非課税仕入れ(消費税がかからない取引)の割合が大きいため率は低めです。

原則課税、簡易課税はどちらが有利か?

簡易課税を選択することにより処理は楽になりますが、税額が原則課税よりも有利になるかというとそうとも限りません。

例えば、多額の設備投資を予定している年度の場合には要注意です。

原則課税で計算すれば基本的には支払った消費税額の全額を預かった消費税額から控除することができますが、簡易課税で計算すると支払った消費税額の何割かしか預かった消費税額から控除することができません。

更に、簡易課税を選択すると2年間は継続しなければならないことと、実際に支払った消費税額が預かった消費税額より多かったとしても還付を受けることができないというデメリットがあります。

従って原則・簡易の選択は今後の事業計画に沿った上で慎重に行うことが大事です。

簡易課税は適用したい年度の前年度末までに届出書を提出しなければならないので、早めに税理士等と打ち合わせをする必要があります。

税抜処理・税込処理どちらが良いか

消費税の処理方法は、税抜・税込処理どちらでも良いことになっています。

(免税事業者は税込処理が原則です)

どちらの方法によっても損益に影響することは基本的にありませんが、金額により税法上の取り扱いが異なるものが発生した場合には注意が必要です。

法人成りした場合ですが少額の減価償却資産(10万円未満)の全額損金算入の特例の判定は税込処理で行った場合税込の金額で判定します。

従って税込処理で計上を行った場合、取得価額の税抜金額が10万円未満であっても税込金額が10万円以上であればこの特例の適用がありません。

このように税込処理していた場合には(法人税の場合)納税額が増えてしまうリスクがあります。

税抜処理は手間がかかるイメージがありますが市販の会計ソフトを使えば問題はありません。

損をするリスクを回避するには税抜処理を行うことをお勧めします。

まとめ

フリーランスの消費税の納税義務と計算方法をまとめてみました。

売上高が1000万円を超えた時点で、今後の事業計画を踏まえ消費税の計算方法・処理方法を早めに考えていくことが重要です。

消費税は手続によって大きく税額が異なってしまう場合があるため、売上1000万円を超えたら税理士との契約を検討することをお勧めします。