クラウド会計ユーザー向け電子帳簿保存法の適用の整理

クラウド会計ユーザーの方は、クラウド上で入力し、クラウド上で帳簿を作成しているため普段意識されることはあまりないと思いますが、

所得税や法人税などの国税に関する書類は紙の保存がいまだに原則であり、電子データによる保存は例外扱いとなっています。

電子データの保存に関する法律が「電子帳簿保存法」という法律です。

平成10年7月に施行された法律ですが、平成17年にはスキャナ保存制度が導入され、ここ最近も27年、28年と改正が続いており適用要件が大幅に緩和されました。

そんな流れもあり「電子帳簿保存法対応」とうたった会計ソフトも増えていますが、

実際はすべての帳簿・書類を今すぐ電子保存をできるわけではありません。

この記事では、主にクラウド会計ユーザー向けに電子帳簿保存法の適用関係を整理します。

電子帳簿保存法が定めていることは大きく分けて「電子保存」「スキャナ保存」

電子帳簿保存法が定めていることは大きく分けて、2つあります。

  • 電子保存・・・作成の最初の記録段階から一貫してPCで作成したものの保存方法(帳簿など)
  • スキャナ保存・・・既に紙媒体のものをスキャナで読み取る保存方法(領収書・契約書など)

 

電子保存については、現段階ではクラウド会計ソフトは対応しておらず、

一部のインストール型の会計ソフトしか対応していません。(訂正・削除履歴の確保などが必要となるためです。)

つまりクラウド会計ソフトで作成した帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)、決算関連書類(貸借対照表、損益計算書など)、請求書等は原則紙で残す必要があります。

ここ最近改正が行われているのは主にスキャナ保存の方です。

最初から電子で保存する電子保存と違って、あくまで紙媒体の書類をスキャナで電子化して保存する方法です。

クラウド会計ソフトがうたっている「電子帳簿保存対応」もスキャナ保存のことで、電子保存のことではないのでご注意ください。

普段の現金払いの領収書等をスマホなどで写真に撮り、会計ソフトに取り込むイメージを持ってもらえれば良いでしょう。

スキャナ保存の対象となる書類

スキャナ保存の対象となる書類は以下のとおりです。

平成27年度改正の前は、スキャナ保存の対象は3万円以上のものに限られていましたが、現在はいくらのものでも対象にできるようになりました。

  • 重要な書類(人・モノ・金の流れに直結する書類)

契約書・請求書・領収証・納品書・請書・借用証書・預り証・預金通帳・小切手・手形など

  • それ以外の書類(一般書類)

検収書、作業報告書、見積書、注文書、契約の申込書など

スキャナ保存の要件

スキャナ保存の要件は、以下のとおりです。

  1. 税務署への承認申請
  2. 重要書類の入力期間の制限(書類受領~タイムスタンプ付与までの期間制限(最大37日))
  3. 一定水準の解像度による読み取り
  4. カラー画像による読み取り(重要書類のみ)
  5. タイムスタンプの付与(書類受領者が付与する場合には、受領後3日、受領者以外の者が付与する場合は最長37日以内に)
  6. 解像度及び階調情報の保存
  7. 大きさ情報の保存(重要書類のみ)
  8. ヴァージョン管理
  9. 入力者情報の確認
  10. 適正事務処理要件(チェック体制・定期的な検査・改善体制)
  11. スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持
  12. 見続可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等)の備え付け
  13. 電子計算機処理システムの開発関係書類等の備え付け
  14. 検索機能の確保

上記のうち、1、4、9以外はシステムが要件を満たしていれば可能です。

ユーザーが直接かかわる

1.税務署への承認申請

4.タイムスタンプの付与

9.適正事務処理要件

を見ていきましょう。

事前に税務署への承認申請が必要

領収書・契約書等をスキャナ保存するためには、スキャナ保存を開始しようとする日の3か月前までに所轄の税務署に

「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書」

を提出しなければなりません。

受け取った領収書・契約書等にはタイムスタンプの付与が必要

領収書・契約書を電子保存するためにはタイムスタンプ(受け取った日時を示す文字列)を付さなければなりません。

クラウド会計ソフト(freee、MFクラウド)はこの機能を有料で利用することができます。

書類を受け取った者は、書類に手書きで署名の上、3日以内にタイムスタンプを付与する必要があります。

(書類を受け取った者以外がタイムスタンプを付す場合には、37日以内)

適正事務処理要件を満たす必要あり

スキャナ保存が適正に行われているか、社内で規定を定める必要があります。(適正事務処理要件)

具体的には

  1. チェック体制ができているか(原則2人以上の担当が入力を担当)
  2. 定期的な検査を行っているか(紙とスキャナ画像が同等であることを確認)
  3. 不備があった場合の改善体制がとられているか

を規定する必要があります。

図で表すと次の体制をとっていることを定めた規定が必要になります。

上記で示したとおり書類の受領後からタイムスタンプ付与までは原則2人の担当者が必要となります。

(少なくとも、書類の受領者とタイムスタンプ付与者は分ける)

それに加え、経営者その他幹部(外部の業者でも可能です)が定期的な検査を行い、問題があった場合の改善体制もとられている必要があります。

ただ上記の場合、社長1人だけの会社などは実質不可能となってしまうため、小規模企業者(従業員が20人以下の事業者)に対する特例が平成28年度の税制改正で加えられました。

この場合、タイムスタンプ付与までの作業を1人で行い、定期的な検査は外部の専門家(税理士など)が担当することでチェック体制の要件を満たすことができます。

ただこの場合受領者がタイムスタンプを付与するので、書類受領後3日以内にタイムスタンプを付与しなければなりません。

定期的な検査が行われるまでは紙の書類は保存が必要

紙の書類は、スキャンしてタイムスタンプを付与すれば即廃棄できるわけではありません。

経営者や外部の専門家の定期的な検査が行われるまでは紙の領収書等は廃棄することができませんので、注意しましょう。

まとめ

クラウド会計ユーザー向け電子帳簿保存法の適用の整理をしました。

ポイントは

  1. クラウド会計ソフトが対応しているのは紙媒体の領収書・契約書等をスキャンして保存する「スキャナ保存」のみ。帳簿の電子保存には対応していない
  2. スキャナ保存の要件で直接ユーザーに必要なことは、税務署への承認申請・タイムスタンプの付与・適正事務処理要件
  3. 受領者がタイムスタンプを付与する場合には、受領後3日以内に行う
  4. 適正事務処理要件は3つ(チェック体制・定期的な検査・改善体制)
  5. 小規模企業者の場合には、1人でタイムスタンプ付与まで行い、定期検査を外部の税理士等に任せることによってチェック体制が満たされているとみなされる例外あり

です。

まだまだ「紙の領収書を廃棄しても良い」を満たすためのハードルは高い印象です。

ただクラウド会計ソフトで提供している領収書読み取りのシステムは、データ入力の簡略化と紐づけができる機能だけでも利用する価値はあります。

まずは無料で利用しつつ電子帳簿保存の本格運用は今後の様子をうかがってから検討する、という方法もお勧めです。


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