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非居住者との取引の課税関係は検討順序(国内法→租税条約)を守りましょう

ここ最近、法人だけでなく個人も国境を越えて活躍される方が増えきています。

日本の会社が、外国在住の日本人(非居住者)に対してサービスの対価を支払うことも珍しくありません。

取引が2国間に及ぶと、課税関係も複雑になります。

非居住者との取引の課税関係で大事なのは、国内法と租税条約の検討の順序です。

検討の順序は、国内法→租税条約

非居住者との取引の課税関係を考える場合、以下の2つの取扱を考えなければいけません。

  1. 日本国内の税法(国内法)の取扱い
  2. 租税条約の取扱い

日本国内の税法とは、相手が個人の場合主に所得税法、法人の場合法人税法が該当します。

租税条約とは、二重課税の排除や脱税の防止を目的として結ばれる2国間の条約です。

例えば外国に住む日本人の方が、日本国内から原稿などを買いて著作権使用料を得た場合、国内法では20.42%の課税がされますが、租税条約上では「使用料の税率は10%までとしましょう」と取り決めしている場合が多いです。

国内法と租税条約上の取扱いが違う場合には、租税条約が優先されますので、上記の場合10%が適用されます。

 

国内法よりも租税条約が優先されるのであれば、最初から租税条約だけ検討すれば良いのでは?というとそういうわけではありません。

先に述べたように租税条約の目的はあくまで「二重課税の排除」による取引の円滑化なので、租税条約を優先させることによって逆に納税者の負担が増えてしまうことは起こらないようにしています。

租税条約の「限度」税率と言われるのはそのためです。

使用料の例で言うと、国内法では5%で、租税条約で10%の場合には5%が優先されます。

租税条約では、「10%まで課税して良い」、と言っているに過ぎず「10%で課税せよ」と言っているわけではありません。

従って租税条約は国内法に優先されるが、「国内法よりも不利にならない範囲で」という条件付きということになります。

非居住者との取引の課税関係を検討する場合は、国内法、租税条約いずれかを検討するだけでなく両方検討し、検討順序(国内法→租税条約)を守るようにしましょう。

検討事項

検討順序を確認したら、国内法、租税条約両方について以下の事実を確認します。

  1. 個人又は法人の居住地国
  2. PEの有無
  3. 所得の源泉地
  4. 源泉地国の適用税率
  5. 源泉地国の納税方法
  6. 二重課税の排除方法

1.の居住地国とは、個人の場合住所や居所がある国、法人の場合は本店がある国、など拠点にしている国のことです。日本の税法上では、居住地国が日本以外である場合には「非居住者」扱いとなり日本国内で発生した所得に対してのみ課税が行われます。

2.のPEとは、Permanent Establishmentの略で、恒久的施設と訳されます。具体的には支店、事務所等の物理的施設で、その国で事業活動を行っているかの判定基準となります。

3.の所得の源泉地とは、所得が発生したとされる国のことです。

4.の適用税率とは、課税される場合の税率です。

5.の納税方法とは、税金の納め方(日本の場合確定申告か、源泉徴収か、など)のことです。

6.の二重課税の排除方法とは、居住国と源泉地国とで二重課税が発生した場合の排除方法(外国税額控除など)のことです。

具体例

日本に住所や事務所等のPEを有しておらず、ブラジル在住の日本人Aが日本の会社甲向けにソフト開発を行い、ライセンス料を得ているとしましょう。

日本の会社はそのライセンス料を日本国内で行う事業に使用しているとします。

この場合、ブラジル在住の日本人Aが日本の会社甲から受領するライセンス料は日本で課税されるのでしょうか?

手順①国内法の確認

  1. 居住地国・・・日本人Aは日本国内に住所を有していないため、国内法上日本は居住地国ではありません。日本の国内法上Aは「非居住者」の扱いとなります。
  2. PEの有無・・・日本人Aは日本国内に事務所等のPEを一切有していませんので、事業としての課税は行われません。
  3. 源泉地国の判定・・・国内法上日本国内で行う業務のために使用許諾を受けた著作権を使用する場合、日本に所得源泉があると判定されます。従って国内法上Aが受ける著作権使用料が発生した国は日本になります。
  4. 源泉地国の適用税率の判定・・・国内法上、PEを持たない非居住者に支払われる使用料に対しては20.42%の税率により課税されます。
  5. 源泉地国での納税方法・・・国内法上非居住者が使用料の支払いを受けた場合には、源泉徴収が行われて日本での納税が終了します。日本の会社甲はAに支払いを行う際に源泉徴収を行わなければいけません。

手順②租税条約の取扱の確認

  1. 居住地国・・・日本 – ブラジル租税条約上、ブラジルに住所を有しているため日本では非居住者とされます。→国内法と相違なし
  2. PEの有無・・・日本 – ブラジル租税条約に定めるPEを日本国内に有していません。→国内法と相違なし
  3. 源泉地国の判定・・・日本 – ブラジル租税条約上、「使用料」の定義に所得区分が当てはまります。国内法の「使用地主義」に対して、ブラジルでは使用料を支払った者の居住地国において所得が発生したという考えである「債務者主義」を取っています。従っていずれの場合も源泉地国は日本となります。→国内法と相違なし
  4. 源泉地国の適用税率の判定・・・日本 – ブラジル租税条約では、使用料の限度税率を25%と定めています。→国内法と相違あり。この場合、租税条約上の限度税率である25%ではなく国内法の20.42%が優先されます。
  5. 源泉地国の納税方法・・・租税条約上納税方法の規定はありません。従って源泉地国である日本の国内法に定める源泉徴収によって納税は行われることになります。

なお、上記の場合には二重課税は生じていないため排除は不要です。

ポイントは手順②の4.源泉地国の適用税率の判定で、租税条約上の限度税率25%を使うのではなく、日本の国内法で定める源泉税率20.42%を使うという点です。

先に述べたとおり、租税条約は、国内法よりも不利にならない範囲で優先適用されます。

租税条約だけ検討してしまうと、「日本 – ブラジル租税条約における使用料の源泉税率は25%だから、25%で課税しよう」と早合点してしまいがちです。

このようなミスを侵さないよう非居住者との取引の課税関係は国内法、租税条約をそれぞれ丁寧に検討する必要があります。

まとめ

非居住者との取引の課税関係を考えるときの検討の順序(国内法→租税条約)についてまとめました。

租税条約は改正も行われており、都度確認する必要があります。

思わぬトラブルにならないよう国内法、租税条約ともに慎重に検討していきましょう。