海外転勤・出向で自宅を賃貸に出す場合の課税関係と納税管理人の指定

Last Updated on 2020年1月10日

海外転勤が決まった場合、自宅を賃貸に出すことを検討されている方もいるでしょう。

今日は、海外転勤中に自宅を賃貸に出して収入を得た場合の課税関係と、納税管理人の指定について説明します。

海外転勤中は日本国内で発生した所得のみ納税義務が発生する

1年以上の予定で海外の支店などに転勤・出向すると、一般的には、日本国内に住所を有しない者と推定されます。

所得税法上ではこのような人たちの事を非居住者といいます。

非居住者は日本国内で発生した所得(国内源泉所得といいます)のみ納税義務が発生します。

従って海外に転勤・出向中に日本国内にて何も所得も得ていなければ、日本国内で申告する必要はありません。

日本国内の不動産から賃貸収入がある場合は日本で申告が必要

非居住者が日本国内で課税される場合の「国内源泉所得」には「国内に所在する不動産の賃借料等」が含まれます。

従って非居住者であっても、日本国内にある不動産について賃貸料を得ている場合には日本で申告を行う必要があります。

(不動産の賃貸収入で法人契約の場合、賃貸料受取時に20.42%の源泉徴収をされた上で更に確定申告をする必要があります)

しかし、国外に在住する非居住者が日本国内の申告を行うことは困難です。

そこで、「納税管理人」という制度が存在します。

納税管理人とは?

納税管理人とは、国外にいる非居住者である納税者に代わって日本国内にて納税事務(申告書や届出書の提出など)を行う人の事をいいます。

納税管理人は、親戚の他個人の税理士や、法人もなることができます。

納税管理人はあくまで納税者に代わって納税事務を行う人であるので、滞納等に関しては責任は負いません。

 

海外転勤・出向が決まった場合に自宅を賃貸に出す場合には(その他収入が発生する見込みである場合には)、出国までに納税管理人を指定しましょう。

納税管理人の指定手続

納税管理人を指定する場合には、出国日までに「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を税務署に提出します。

フォーマットは国税庁のHPにあります。

[手続名]所得税・消費税の納税管理人の届出手続|申告所得税関係|国税庁

届出書の提出先は、納税管理人の納税地ではなく、非居住者の納税地となり次の順番で判断します。

(国税庁HPより抜粋)

(1) 国内において行う事業に係る事務所等を有する場合
その事務所等の所在地

(2) (1)以外の者で、その納税地とされていた住所又は居所にその者の親族等が引き続き、又はその者に代わって居住している場合
その納税地とされていた住所又は居所

(3) (1)及び(2)以外の場合で、国内にある不動産の貸付け等の対価を受ける場合
その貸付けの対価に係る資産の所在地(その資産が二つ以上ある場合には、主たる資産の所在地)

(4) (1)~(3)により納税地を定められていた者が、そのいずれにも該当しないこととなった場合
その該当しないこととなった時の直前において納税地であった場所

(5) (1)~(4)以外で、その者が国に対し所得税の申告及び請求等の行為を行う場合
その者が選択した場所

(6) (1)~(5)のいずれにも該当しない場合
麹町税務署の管轄区域内の場所

今回の例のように家族で国外に移住し、日本国内に所在する自宅の不動産収入を得る場合には(3)の不動産(自宅)の所在地を管轄する税務署に提出することになります。

まとめ

海外転勤・出向で自宅を賃貸に出す場合の課税関係と納税管理人の指定について説明しました。

海外に行った後に慌てないよう、日本国内にて所得が発生すると見込まれる場合には、出国までに納税管理人の指定を忘れずにしておきましょう。