「主たる収入でない300万円以下の収入は雑所得」の通達改正案について

Last Updated on 2022年8月26日

「主たる収入でない300万円以下の収入は雑所得」とする通達改正案が出ました

2022年8月1日に、国税庁から所得税基本通達の一部改正案が

発表されました。

「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募手続の実施について|e-Govパブリック・コメント

主たる収入でない300万円以下の収入(例えば、会社員の副業など)は事業所得ではなく「雑所得」として取り扱う

というものです。

 

今後意見を取り入れていくようですが、

実質的には決定と考えて良いでしょう。

2022年1月から遡って適用されます(2023年3月の確定申告から)。

 

これまで論争の多かった「事業か、雑か」

について一応の数値の基準(収入300万円)が示されたことは

大きな一歩です。

 

  • テクノロジーやギグワークの進化によってこれまでにない働き方が登場し始めている
  • 事業か、雑か、という判断が難しくなってきている
  • 主たる収入でない300万円以下の収入は雑所得として取り扱われる予定
  • あくまで通達なので、法的な強制力はない
  • 事業としての要件を満たすなら、金額に関わらず事業所得として申告すれば良い

 

 

通達の改正背景

通達の改正背景として、次のことが書かれています。

国税庁においては、シェアリングエコノミー等の「新分野の経済活動に係る所得」や「副業に係る 所得」について、適正申告をしていただくための環境づくりに努めているところ、これらの所得については、所得区分の判定が難しいといった課題がありました。

「新分野の経済活動に係る所得」とは、

おそらくテクノロジーやギグワークの普及によって可能となった稼ぎ方のことを言っているのだと思います。

Uberの配達員やAmazon・メルカリなどを使ったネット物販、オンラインサロン運営、暗号資産・NFT売買など。

特にインターネットを使ったビジネスは、

時間や場所にとらわれないので事業か雑かの判断が難しくなっているのでしょう。

 

 

事業所得と雑所得の違い

そもそもなぜこのように数値を示して事業と雑の区分をはっきりさせたのでしょうか。

その理由は、

事業所得は雑所得と比べると税金の取り扱いが非常に優遇されているからです。

具体的には、以下のとおりです。

税務上の取り扱い事業所得雑所得
青色申告特別控除(10万円/55万円/65万円)✖️
他の所得との損益通算✖️
損失の3年間繰越✖️

 

特に損益通算の優遇を利用して、

会社員が開業届を出して事業所得を赤字にして申告し、給与所得と相殺することで所得税の還付を受ける人、そしてそれを指南するコンサルタントがいたようです。

今回の改正の大きな理由にもなっていると思われます。

 

なお事業所得と雑所得の違いを簡単に説明すると、

事業所得=本業による所得、雑所得=片手間仕事など、本業以外の所得

となります。

開業届を出す、といった形式的なことだけでは事業所得にはなりません。

事業所得として認められるには、

  1. 自己の危険と計算において行っているか
  2. 営利・有償性があるか
  3. 反復・継続性があるか
  4. 社会通念上事業と認められるものか

などの条件が必要です。

副業でネットビジネスを行っている方は注意。開業届・青色申告承認申請を出す=即事業所得ではありません

したがって売上がほとんどでず、赤字の状態で給与と相殺して還付、というスキームは

「そもそも事業じゃないじゃん」という単純な論理でこれまでもグレーでした。

数値の基準が示されたことで、

今後このようなことをしにくくなるでしょう。

(無理矢理300万円超の売上、それを超える経費を作るのは大変かと)

 

収入300万円以下=雑所得になるとも限らない

混乱させる書き方ですが、今回の改正によって

収入300万円以下=即雑所得にしなければならない

わけではありません。あくまで目安です。

というのも、今回改正案が出されているのは

税務行政を円滑に進めるための「通達」だからですね。

あくまで、法令の解釈や適用の一般指針で、

法的な強制力はありません。

 

したがって、主たる収入以外の収入が300万円以下であっても、

「これでわたしはご飯を食べている!」

ということを堂々と主張されて事業所得として

申告することは問題ありません。

 

実際、これまで会社員の方で給与収入以外の300万円以下の収入を

「事業所得」として申告した事例もあります。

  1. 自分の名前で事業を行っている
  2. 本業の会社が本業以外の仕事を後押ししている
  3. 本業の会社でフレキシブルな働き方が可能で、事業に時間をかけられる
  4. 社会通念上認められている事業である
  5. 黒字が今後見込まれる

という特徴のある方々です。

あくまで事業か雑か、の判断は上記の記事でも示した通り

といったことを考慮して決定します。

税理士は事業の性質や納税者の方の生活・仕事

の状況をすべて把握できるわけではありませんので、

事業・雑の判断はできません。

最終的には納税者自身が上記を踏まえて判断する必要があります。

 

これまで主たる収入でない収入を

事業所得として申告されていた方(収入300万円超の方含め)

は、自分のしていることが事業に該当するのか、

慎重に判断しましょう。

 

まとめ

「事業か、雑か」という論争はこれまでも多くありました。

今回「300万円」という一応の指針ができて

判断しやすくはなったかと思います。

とはいえ、この数字に必ずしもこだわる必要はありません。

もし自分の行っていることが事業と言えるのであれば、

堂々と事業所得として申告すれば良いでしょう。

逆に、「300万円超だから事業所得」と必ずしも言えないことも

ご注意ください。