海外在住の人に翻訳の仕事をしてもらったら源泉徴収は必要?著作権の有無がポイント

「海外に住んでいる人に翻訳の仕事をしてもらって、報酬を支払ったのですが、源泉徴収は必要ですか?」

という質問を多く受けています。

源泉徴収とは、あらかじめ一定の税率で計算した税金を収入から差し引く制度のことですが、

日本だけでなく海外在住の人に一定の報酬を支払いをした場合にも適用されます。

海外在住の方に翻訳の仕事をお願いした場合の源泉徴収の有無でポイントとなるのは、著作権の有無です。

 

非居住者の源泉徴収の対象となるもの

日本に1年以上住所のない海外在住の方(非居住者)に対する支払いをするときには、

その支払が源泉徴収の対象となるか・ならないかの確認が必要です。

非居住者の源泉徴収の対象となるものは以下です。

  1. 土地等の譲渡
  2. 人的役務の提供事業の所得
  3. 不動産の賃貸料
  4. 利子
  5. 配当
  6. 貸付金利子
  7. 使用料
  8. 給与その他人的役務の提供に対する報酬、公的年金、退職手当
  9. 事業の広告宣伝のための賞金
  10. 生命保険契約に基づく年金等
  11. 定期積金の給付補てん金等
  12. 匿名組合契約等に基づく利益の分配

この中で海外在住の非居住者の方に翻訳の仕事を依頼した場合に関わってきそうなのは

2、7、8ですが、

2の人的役務の提供事業の所得というのは、

芸能人が所属している事業所が日本に滞在している間に稼いだ所得などが該当するので除外します。

8の給与その他人的役務の提供に対する報酬、公的年金、退職手当についても、日本に実際に来て非居住者が仕事をした場合における話などで、除外。

そうすると海外で翻訳の仕事をしてもらった場合に源泉徴収が有無の論点として考えられるのは

7の使用料に該当するか否か、

ということになります。

 

使用料とは?

非居住者の支払で源泉徴収の対象となる使用料とは、

  • 工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるものの使用料又はその譲渡による対価
  • 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の使用料又はその譲渡による対価
  • 機械、装置その他政令で定める用具の使用料

を指します。

今回は翻訳と関係する

著作権の使用料又はその譲渡対価になるかを考えてみます。

 

著作物の定義は著作権法から

その翻訳が著作権の対象となるかですが、

所得税法では著作権の対象となる「著作物」の定義はありません。

したがって、著作権法から借用して解釈することになります。

著作権法における著作物の定義は、以下となっています。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

そして著作物の例示として、以下のものが挙げられています。

(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

以上のとおり、なんらかの思想や感情表現が含まれているものについては、

著作物と定義されています。

一方でこれらを含まない事実の伝達に過ぎないものについては除外されています。

なお元の著作物を翻訳したものは2次的著作物となり、著作権の対象になると規定されています。

参考:

非居住者に支払う翻訳料|国税庁

 

契約内容が大事

海外在住の方に翻訳の仕事をお願いした場合には、以上を踏まえて

その翻訳が著作物になるかを検討し、

源泉徴収の有無を考えていくことになるのですが、

第3者(税務署)に

「なぜこの支払に対して源泉徴収をしているのか(していないのか)」

を説明するには契約内容が大事になってきます。

例えば「買取契約」などが契約文書にあれば、著作権の譲渡となり源泉徴収が必要となる根拠になります。

一方その翻訳が著作物に該当しないので(租税条約を踏まえて)源泉徴収をしない

という判断になったのであれば、契約書等に

「この契約において著作権の権利関係は一切生じない」

などといった文面を入れておくと後々第3者に説明しやすくなるでしょう。

この文面があれば100%源泉徴収不要、ということではなくあくまで内容で判断されるのですが、

税務署がまずチェックするのは契約書なので、

口頭ではなく契約書という形で根拠書類を残しておくことが後々

のリスク回避に役立ちます。

 

租税条約の確認も必要

なお実際には日本の所得税法だけでなく租税条約も考慮し、租税条約を優先させることになります。

仮に納品された翻訳が著作物に該当し、租税条約上も日本にて源泉徴収が必要となる場合においても、

日本の所得税法における源泉税率である20.42%が免除又は減免される可能性があります。

免除又は減免を受けるには、税務署に租税条約に関する届出書の提出が必要となります。

 

まとめ

海外在住の方に翻訳の仕事をしてもらった場合の源泉徴収について

書きました。

ポイントはその翻訳の仕事に対する対価が使用料に該当するか(翻訳物が著作物に該当するか)です。

心配な方は、いちど専門家にご相談ください。


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