Last Updated on 2016年12月29日
年末になると、「年末調整」「法定調書」のお知らせが税務署から届くようになります。
※年末調整につきましては、こちらの記事を参考にしてください。
フリーランスや1人社長など基本的に従業員を雇わない方からすると、
「税務署に提出すべき法定調書がある」
と聞いても何のこと?うちは関係ないのでは?と思われる方もいらっしゃるでしょう。
確かに提出すべき書類は少ない場合が多いのですが、フリーランスや1人社長でも提出すべき可能性のある法定調書がいくつかあります。代表的なものを見ていきましょう。
目次
そもそも法定調書とは?
法定調書とは、所得税法などの規定によって税務署に提出が義務付けられている給与や報酬などの支払状況を示す資料をいいます(平成28年8月現在、全部で60種類)。
60種類すべてを提出しなければいけないという訳ではなく、該当する調書のみを提出することになります。
これらの法定調書に記載すべき支払先は主に給与を受ける個人や報酬を受ける個人事業主です。すなわち、税務署は支払を受けている個人や個人事業主が正しい金額で確定申告をしているかどうか、裏付けをとるためこのような調書の提出を求めていると言えます。
また、法定調書と同時期に市区町村に提出する給与支払報告書は、法定調書とは別物で住民税と国民健康保険料の計算資料のために提出する書類です。
「源泉徴収票」と様式が同じで、用紙も一式にされているので分かりづらいですが混同しないように気を付けましょう。
主な法定調書
前述したとおり法定調書は60種類ありますが、フリーランスや1人社長が提出すべき可能性のある法定調書はそれほど多くありません。ここでは代表的なものを紹介します。
1.給与所得の源泉徴収票
提出すべき人:法人、個人問わず年内に給与等を支払った方
提出すべき給与等の範囲(年末調整を行っている場合):
- 法人の役員の場合・・・給与等が150万円を超えるもの
- 弁護士、司法書士、税理士等の専門職の場合・・・給与等が250万円を超えるもの
- 1.及び2.以外の場合・・・給与等の支払金額が500万円を超えるもの
上記の中で1人社長、フリーランスがチェックすべき項目は3.になるでしょう。
1人社長の場合には自分への給与が年間150万円、専従者のみがいるフリーランスの場合には専従者への給与が年間500万円を超える場合に源泉徴収票を税務署に提出することになります。(年内に前職での勤務がある場合には、前職での給与所得も含めて判断します)
なお、この源泉徴収票は市区町村に提出すべき給与支払報告書と同綴りにされていて、4枚バージョンと3枚バージョンとがあります。
- 3枚バージョン・・・1、2枚目は市区町村へ提出する給与支払報告書、3枚目が受給者へ交付する源泉徴収票
- 4枚バージョン・・・1、2枚目は市区町村へ提出する給与支払報告書、3枚目が税務署へ提出する源泉徴収票、4枚目が受給者へ交付する源泉徴収票
3枚バージョンは、税務署へ源泉徴収票を提出する必要がない方が使用し、4枚バージョンは税務署へ源泉徴収票を提出する必要がある方が使用します。
なお、給与の支払額にかかわらず、給与支払報告書は市区町村に提出、源泉徴収票は受給者本人に交付する必要がありますので注意しましょう。
2.報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
提出すべき人:外交員への報酬、社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬、馬主への賞金、プロ野球選手の報酬及び契約金、弁護士・税理士への報酬等を支払った方
提出すべき報酬等の範囲:
- 外交員報酬・・・同一人に対する支払金額が50万円を超えるもの
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬・・・同一人に対する支払金額が50万円を超えるもの
- 馬主への競馬の賞金・・・1回の支払金額が75万円を超える支払いを受けた方に係るその年中の全ての支払金額
- プロ野球選手への報酬及び契約金・・・同一人に対する支払金額が5万円を超えるもの
- 上記以外の弁護士・税理士等に対する報酬・・・同一人に対する支払金額が5万円を超えるもの
この中でフリーランス、1人社長の人が多く関わるのは5.の弁護士・税理士等に対する報酬ではないでしょうか。
会社設立、税務顧問などに対する報酬等が該当します。
なお、源泉徴収しているか否かにかかわらず、上記に報酬等に該当すれば支払調書の提出は必要となりますので注意しましょう。
3.不動産の使用料等の支払調書
提出すべき人:不動産の使用料等を支払った法人と不動産業者である個人(個人は賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を行う場合を除く)
提出すべき不動産の使用料等の範囲:同一の方に対する支払金額の合計が15万円を超えるもの
(なお、法人に支払う不動産使用料等については権利金、更新料のみの提出となります。)
フリーランスの場合には不動産業者のみが当てはまるので該当しない方が多いでしょう。
1人社長の場合、起業する際にあらたにオフィスを構えて法人へ支払った権利金や個人へ支払った家賃・権利金がある場合(同一人への支払い金額が15万円超に限る)などに提出が必要となります。
法定調書の提出期限
法定調書は、支払の確定した日の属する年の翌年1月31日までに所轄の税務署に提出します。
なお、市区町村へ提出する給与支払報告書の提出期限も同じく1月31日までです。
法定調書の提出方法
法定調書は、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」という表紙をつけて税務署へ提出します。(提出すべき法定調書がない場合にも摘要欄に「該当なし」と記載して合計表だけ提出します)
なお、市区町村へ提出する給与支払報告書には、「総括表」という表紙をつけて提出します。
提出方法は、税務署又は市役所の窓口に直接手渡し又は郵送、e-tax・el-taxによる方法があります。
e-tax、el-taxによる提出は自宅にいながら必要事項を入力して送信するだけで完了するので便利です。
ただし、利用するにはICカードライタの購入、電子証明書(マイナンバーカードに付与されています)の取得、e-taxソフト等必要なソフトのインストールが必要となります。
マイナンバーの記載について
平成28年1月1日より法定調書など税務署等に提出する書類にマイナンバーの記載が必要となりました。
マイナンバーについては下記2つの注意事項があります。
1.マイナンバーの提供における本人確認
法定調書を提出する人は、法定調書にマイナンバーを記載するため従業員や報酬の支払先からマイナンバーの提供を受けなければなりません。その際、原則として「番号確認」と「身元確認」を行う必要があります。
写真入りのマイナンバーカードがあれば番号と身元確認の両方を行うことができますが、通知カードしか持っていない場合には、通知カード+運転免許証、健康保険証などの書類が必要となります。
源泉徴収票の場合、専従者のみがいるフリーランスや1人社長は専従者の個人番号やや自分の番号を確認すれば良いので特に問題はないでしょう。
ただし、弁護士・税理士等への報酬の支払や不動産の使用料等の支払がある場合には、支払調書に記載するマイナンバーを取得するために支払先から本人確認を受けた上であらかじめマイナンバーの提供を受けなければなりません。
また、実際に税務署へ書類を提出する場合には提出者自身の本人確認書類の提出が必要(マイナンバーカード又は通知カード+身元確認書類のコピー)となります。(e-tax、el-taxで提出する場合には本人確認書類の提出は必要ありません。)
2.マイナンバーの取り扱い
マイナンバーを取り扱う事業者は、下記の点に注意する必要があります。
- 必要な場合に限ってマイナンバーの提供を従業員等に求めることが可能
- 社会保障・税に関する手続書類に記載する場面でのみマイナンバーの利用・提供が可能
- マイナンバーの必要がなくなった場合には速やかに廃棄
- マイナンバーの適切な安全管理措置を講じる必要あり
1、2に関する具体的な注意としては
- 従業員に交付する源泉徴収票にはマイナンバーを記載しない
- 報酬の支払先に支払調書を交付する場合にはマイナンバーを記載しない
が挙げられます。特定の目的(社会保障・税に関する手続)以外はマイナンバーを利用(記載)することが禁じられているからです。
3、4に関しては本来取扱規定等があると望ましいのですがフリーランス、1人社長の場合には
- マイナンバーの管理方法(紙か電子か、管理場所等)をどうするか
- フリーランスで専従者がいる場合には誰が管理を担当するか
などを決めておくと良いでしょう。
まとめ
フリーランス、1人社長が提出すべき可能性のある法定調書についてまとめました。
提出する書類は少ないものの、市区町村へ提出する書類もあったりとなかなかややこしいのが現状です。
今年度から始まったマイナンバーに関する注意点も参考にしていただけたらと思います。
なお、法定調書には上記に掲げた以外にもたくさんありますので一度下記リンクより確認していただくことをお勧めします。