令和3年度税制改正(個人所得税関係)の解説

Last Updated on 2021年4月11日

2020年12月21日に、令和3年度の税制改正大綱が公表されました。

今回は、その中から個人の所得税関係に絞って主な改正点を解説します。

 

住宅ローン控除の特例措置(13年控除)の延長・要件の緩和

POINT

  • 特例措置(13年控除)の延長
  • 床面積の要件緩和

令和元年10月〜令和2年12月までに住み始めた住宅については、従来の10年から13年に控除期間が延長される特例がありました。

この13年控除の特例が、令和4年末まで延長されます。

令和4年末までに入居すれば、住宅ローン控除の期間を13年とすることができます。

ただし、消費税10%の建物を購入した場合に限ります。

また、現状家屋の床面積が50㎡以上、という要件について

40㎡以上50㎡未満である住宅についても適用できることになりました。

(ただし、床面積が40㎡以上50㎡未満である場合の住宅ローン控除は、

その年分の合計所得金額が1,000万円を超える年については適用されません。)

控除期間の延長、床面積の要件緩和により

制度を利用しやすくなったと言えます。

同族会社発行する社債利子の改正(課税の強化)

 

POINT

  • 同族会社が発行する一定の社債の利子・償還金が総合課税に
  • 令和3年4月1日以後に支払を受ける社債利子・償還金から適用

同族会社が発行する社債利子・償還金で、その同族会社の判定の基礎となる株主である法人と特殊の関係のある個人(その法人の50%超の保有関係がある個人等)が受けるものについては総合課税の対象(他の所得と合算して累進課税)となりました。

 

セルフメディケーション税制(見直し、要件緩和)

POINT

  • 5年延長
  • スイッチOTC医薬品について、療養の給付に要する費用の適正化を行った上での見直しが行われる
  • 健康診断等の健康の保持、疾病の予防の取組を行ったことを明らかにする書類の添付又は提示が不要に
  • 令和4年分以後の所得税に適用

 

健康維持・予防のために購入した一定の医薬品について所得控除が受けられる制度「セルフメディケーション税制」の改正が行われました。

ひとつが、対象となるスイッチOTC医薬品の見直しです。

療養の給付に要する費用か、という観点から専門的な知見を活用して除外・追加が行われるとのことです。

もうひとつが、確定申告時に添付又は提示しなければならなかった

「健康維持の取り組みを行ったことを明らかにする書類」(健康診断結果通知など)が不要となりました。

 

勤続年数5年以下の者の退職所得課税(課税強化)

POINT

  • 勤続年数5年以下の退職所得控除の優遇措置が適用されなくなった
  • 令和4年分以後の所得税について適用

 

退職金に対する課税は、長年の勤労に対するものであることから優遇がされています。

具体的には、

(退職金の収入金額 – 一定の退職所得控除額)✖️ 1/2

という計算式で退職所得を計算します。(一定の役員については1/2の優遇はされません)

今回の改正で、勤続年数5年以下の者については

(退職金の収入金額 – 一定の退職所得控除額)のうち300万円を超える部分については

1/2を乗じる優遇措置を適用しないことになりました。

5年という短期間の勤務に関しては、税金上の優遇が必要ないと判断したのかもしれません。

 

上場株式の配当等の住民税申告不要の場合の手続の一元化(納税環境整備)

POINT

  • 上場株式の配当等について住民税の申告を不要とする手続が所得税の確定申告時に行えるように
  • 令和3年分以後の確定申告から適用

 

上場株式の配当等については、所得税・住民税それぞれについて

  • 確定申告する(総合課税)
  • 確定申告する(申告分離課税)
  • 確定申告しない(申告不要)

のいずれかの申告方法を選ぶことができます。

一般的には、

所得税は申告をし、

住民税は申告不要にする(国民健康保険料を抑えるため)

ことによってトータルの負担を少なくすることができます。

しかしこれを行うには

所得税の申告書を提出したあと、あらためて「申告不要」であることを示すために住民税の申告書も提出する必要がありました。

今回の改正により、

所得税の確定申告書の提出時に住民税の付記事項(申告不要である旨)を追加することによって

あらためて住民税の申告をする必要がなくなりました。

上場株式の配当等の税金・国保負担を減らすために

毎年住民税の申告をしていた人にとっては朗報です。

 

まとめ

令和3年度税制改正(個人所得税関係)をまとめました。

今年は、小さな改正ばかりで目玉となる改正はありません。

どちらかというと、

手続の電子化(紙の代わりに電磁的記録(データ)での申請を認めるなど)

など、納税環境整備に関する改正が多い印象でした。

法人、電子帳簿保存法等については次回以降記事にいたします。