Last Updated on 2021年6月10日
目次
海外企業と取引する場合に確認すること
海外企業と取引する場合、以下の3つを確認する必要があります。
源泉徴収の必要性
源泉徴収は、支払側があらかじめ所得税を差し引き、税務署へ支払う制度です。
給与や、フリーランスへの支払に対して行われます。
この源泉徴収は、海外企業への支払の際にも必要となる場合があります。
あらかじめ、源泉徴収の対象となる支払いか、確認しておきましょう。
取引国と日本の租税条約の有無
次に、取引国と日本との間に租税条約(二国間の税金の取り決め)か確認します。
租税条約と国内の税法の取り扱いが違う場合、租税条約が優先されるからです。
租税条約は、主に二重課税の回避と、投資・経済の活性化を目的とするものなので、
所得が発生した国(源泉地国)での税金の課税を軽くする傾向があります。
したがって、源泉徴収が不要、もしくは軽減される可能性があります。
外国税額控除の検討
海外企業との取引を行う場合、海外でも課税され、日本でも課税される取引があります。
このような二重課税を回避するために用意されているのが外国税額控除制度です。
以下、海外企業に支払いをする場合・海外企業から入金があった場合を例に確認しましょう。
海外企業に支払いをする場合
海外企業に支払いをする場合には、
- 源泉徴収が必要な支払いか
- 租税条約(もし結んでいる場合)を考慮しても1.で出た結論は変わらないか
の検討をします。
①源泉徴収が必要な支払か
海外企業への支払で源泉徴収が必要なものは、
- 国内で行われた人的役務提供に対する支払
- 国内にある不動産の賃貸料の支払
- 配当の支払
- 借入金利子の支払
- 著作権等の使用料の支払
などが挙げられます。
それぞれの源泉徴収税率も確認しておきます。
②租税条約を考慮しても結論は変わらないか
次に、租税条約がある場合には、租税条約を考慮しても結論は変わらないか確認します。
結論が変わる場合には租税条約を優先します。
租税条約を検討する際には下記の2点を確認します。
(A) その支払に関する所得の源泉地(日本国内か国外か)
(B) 租税条約上の源泉税率(限度税率)
まず(A)の所得の源泉地についてですが、所得の源泉地(所得が発生した場所)が租税条約によって置き換えられている場合があります。
つまり、日本の税金上は「国内源泉所得」として源泉徴収の対象であっても、租税条約上は源泉徴収の対象とならない可能性があるということです。
次に(B)の租税条約上の源泉税率(限度税率)について考えてみます。
例えば、使用料の支払いの場合、日本の税法上20.42%の税率で源泉徴収がされます。
しかし、多くの国との間では使用料の支払に対して10%が限度税率として租税条約で定められています。(米国など免税とする国もあります)
この場合、税務署に「租税条約に関する届出書」を提出することにより源泉税率を限度税率の10%とすることができます。
このように租税条約は国内法に優先して適用されます。
取引先が税金上不利な立場にならないよう、あらかじめ上記2つを確認しましょう。
海外からの入金がある場合
海外から入金がある場合には、以下の確認が必要となります。
- 海外から支払われる際、何らかの税金が差し引かれていないか
- 1.で確認したものが二重課税となっていないか
- 二重課税となっていた場合、外国税額控除を検討
海外から何らかの入金があった場合には、実際の請求額と照らし合わせて何か差し引かれていないかを確認します。
例えば、中国に対する貸付金の利息を考えてみます。
中国から貸付金の利息の入金がある場合、次の税金が差し引かれます。
(A) 企業所得税(日本の源泉所得税に該当)
(B) 営業税
(C) その他増値税などの付加税
このうち、(A)の企業所得税は所得に対して発生する税金であり、中国企業が日本企業に代わって中国政府に納付します。
さらに、日本においても貸付金利息は法人税が課税されるため、ここで二重課税が発生します。
この二重課税を回避するために、「外国税額控除」制度を利用します。
外国税額控除とは、外国で支払った税金を、日本の税金から差し引くことができる制度です。
なお、(B)、(C)の税金については所得に対して発生した税金ではないため、二重課税は発生していません。
従って日本企業の費用として処理することとなります。
まとめ
海外企業と取引する場合に確認すること3つ(源泉徴収・租税条約・外国税額控除)をまとめました。
国内企業との取引に比べ、海外企業との取引はどうしても課税関係が複雑となります。
一度取引を始める前に、専門家に相談することをお勧めします。