Last Updated on 2017年6月12日
クラウド会計を利用しているフリーランス・法人の経理を何件かチェックしてみて、お客様が悩む項目がだいぶ分かってきました。
比較的多いのが事業主借・貸(フリーランスの場合)、役員貸付金・借入金(法人の場合)の処理です。
特にスタートアップのお客様はプライベートのお金と区分があまりされていないので迷いやすい項目となります。
目次
事業主借・貸と役員貸付金・借入金勘定はどのようなときに使うのか
取引にプライベート部分が混じっている場合、考えられる取引は以下の2つです。
- 事業(法人)の収入・支出がプライベート口座で発生した場合
- プライベートの収入・支出が事業(法人)口座で発生した場合
以下、フリーランスの場合を例に説明します。
事業の収入・支出がプライベート口座で発生した場合
例えば、事業の収入(売上など)がプライベート口座に入金された場合。
プライベート口座は事業の資産として処理できないので、以下の仕訳となります。
借方)事業主貸 ××× 貸方)売上 ×××
事業主Aさんが、事業売上を個人のAさんの口座に入金させた(個人のAさんにお金を貸した)という意味合いで「事業主貸」を使用します。
次に、事業の支出(事務所家賃など)をプライベート口座から支払った場合は以下の仕訳となります。
借方)地代家賃 ××× 貸方)事業主借 ×××
事業主Aさんが、事業費用を個人のAさんに立て替えてもらった(個人のAさんからお金を借りた)という意味合いで「事業主借」を使用します。
(※クラウド会計でプライベート口座を同期している場合には一旦プライベート口座で入出金処理し、期末に事業主貸・借へ振替ます)
プライベートの収入・支出が事業口座で発生した場合
例えば、親戚にお金を貸していて返済が事業口座にあった場合。
親戚からのお金の返済は事業の収益にはできないので、以下の仕訳になります。
借方)事業口座 ××× 貸方) 事業主借 ×××
事業主Aさんが、個人Aさんに入るべきお金を受け取った(個人のAさんからお金を借りた)という意味合いで「事業主借」を使用します。
次に、自宅家賃の引落が事業口座であった場合。
自宅家賃は事業の費用にはできないので、以下の仕訳になります。
借方)事業主貸 ××× 貸方) 事業口座 ×××
事業主Aさんが、個人のAさんの費用を立て替えた(個人のAさんにお金を貸した)という意味合いで「事業主貸」を使用します。
プライベートの収入・支出がプライベート口座で発生した場合は記帳は必要ない?
以上2つの場合を見てきましたが、
プライベートの収入・支出がプライベート口座で発生した場合
はどうでしょうか。
普通に考えればすべてプライベートで起きたことなので記帳しなければ良いことになります。
もしプライベート口座で事業分とプライベート分両方の取引が混在している場合には、
事業分だけを抜き出して仕訳していく形となります。
ただ1つの口座に事業分とプライベート分が混在していると、仕訳の失念の可能性もあるので、なるべく事業用口座とプライベート口座はきっちり分けておいた方が無難です。
処理の判断に迷う場合はいずれかの科目にまとめるのもあり
お客様から「事業主借・貸、役員貸付金・借入金どちらで処理すれば分からない」という声をお聞きます。
しかし、両科目はいわばコインの裏表のようなものなので、実はどちらで処理しても結果は変わりません。期末に相殺して、多い金額を残すだけだからです。
例えば
事業(法人)の支出がプライベート口座で発生した場合
を考えてみると正しくは、
借方)費用 ××× 貸方)事業主借 ×××
となりますが、
借方)費用 ××× 貸方)事業主貸 ×××
と処理しても問題ありません。
負債(事業主借)の増加=資産(事業主貸)の減少だからです。
判断に毎回迷うくらいであれば、いずれか1つの科目にまとめてしまう方法もありです。
まとめ
お客様からの問い合わせで事業主借・貸と役員貸付金・借入金が多かったので処理をまとめました。
自分でまとめてみても、「分かりづらいな~」と思います。
貸とか借とかついているからでしょうか・・(しかも借方・貸方とは逆という)。プライベートに関連した備忘記録的な勘定科目と考えた方が分かりやすいのではと思います。
事業をスタートしたばかりの間はプライベートの部分が混ざってしまうのでは仕方がないことです。
しかし、事業主(役員)との間の取引が多い場合税務署が目を付ける可能性もゼロではありません。なるべく公私はきっちりと分けておく方が無難です。