海外に行けば課税されない?日本の非居住者の条件「住所」がどこにあるかはどう判定されるか

Last Updated on 2024年3月25日

海外に移住している、又はする予定の方からの相談が増えています。

質問で多いのは、

日本の税法上、非居住者(日本国内に住所がない人)になるためにはどんな条件があるか

ということです。

非居住者は日本国内で発生した所得(国内源泉所得)に関してのみ納税すれば良いため、

高い所得の人を中心に非居住者としての条件を確認したい方が多いようです。

そこで本日は、日本の所得税法上の「非居住者」となるための条件を確認します。

 

非居住者とは?

日本の所得税法上非居住者とは、

国内に「住所」を有さず、又は現在まで引き続き1年以上「居所」を有さない個人

をいいます。

※1年以上の起算日は、入国の日の翌日となります。

ここで言う「住所」は、税法上特に決められた定義がないため、

民法上の住所の定義である「生活の本拠」ということになります。

また、居所とはその人の生活の本拠ではないけれど、その人が現に居住している場所(ホテルや知人宅等のイメージでしょうか)を意味します。

条文で見たとおり、日本の所得税法上非居住者になるかどうかは

「住所(居所)が日本にあるか・ないか」

の問題と置き換えることができます。

そして住所は上記のとおり「生活の本拠」といった抽象的な定義であるため、

実際には次に説明する「客観的事実」を総合的に判断して判定が行われます。

 

住所の判定要素

住所が日本にあるかは次のような客観的事実を基に総合的に判定されます。

 

住居の有無・滞在日数

日本国内において、継続的に住む場所があるかどうかは判定要素となります。

例えば、自分名義の家が日本国内にあり、帰国の都度そちらへ滞在していれば非居住者としての要素は弱くなるでしょう。

一方、帰国時はホテルに滞在するといった場合には非居住者とされる可能性は高くなります。

また、海外・日本それぞれの滞在日数も判定要素の1つとなります。

こちらに関してはあとで183日ルールでも説明しますが、

◯日以上海外にいればOK

といった形式的な決まりはありません。

実際過去の判例では、1年の2/3程度を海外にいて非居住者と認められたケースもあれば、

1年の半分程度でも認められたケースもあります。

 

職業

所得税法施行令(所得税法の細則)14条・15条には、居住者・非居住者を判断するための推定規定というものがあります。

そちらによると

国内において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する

場合には国内に住所を有するもの(居住者)と推定すると規定しています。

例えば、あらかじめ1年以上日本国内での仕事をプロジェクトで任されている場合などは、

非居住者して認められない可能性が高いでしょう。

逆に、継続して1年以上国外に居住することを通常要する職業に就いている場合には、非居住者として推定されることになります。

 

国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有するか否か

家族がいる場合、その家族を国内に残しているか・一緒に連れてきているかは判定の要素になります。

例えば自分が所有する国内に所在する家に出国後も親族を住まわせている場合などは非居住者の要素は弱くなるでしょう。

なお、国内にいる親族に経済的支援を行っているかどうかも判定要素の一つと考えられますが、

こちらも過去の判例では、そのことだけをもって居住者認定の根拠としているわけではありません。

あくまで他の要件を踏まえて総合的に判定します。

 

資産の所在

日本国内に自分名義の資産が多額にある場合、非居住者としての要素は弱くなります。

例えば日本にある銀行口座、不動産などです。

一方国内にある資産でも海外で比較的管理しやすい金融資産(株、FX等)については、

資産のほとんどが日本にある(登録されている)にもかかわらず

住所が日本にある根拠にはならなかった判例もあります。

資産の内容によって判定が変わりますので、注意が必要です。

 

その他、国籍等なども考慮して総合的に判定されます。

 

誤解の多い論点

183日ルール適用?

「183日海外にいれば非居住者として認められますよね?」

といった質問は多いですが、日本の所得税法上そのような規定はありません。

183日ルールとは、

  • 主に二重課税の排除を目的とする二国間の租税条約において給与所得者に認められている「短期滞在者免税」
  • 日本国以外の国での居住者・非居住者の判定

といったものに使われるルールです。

前者に関しては企業の従業員が、海外勤務にあたって短期(183日)の滞在であれば滞在国での課税を免除するといったルールです。

こちらは日本の法律ではなく二国間の租税条約で定められているものであり、あくまでその目的は二重課税の排除です。

後者に関しては、居住者・非居住者判定に183日の滞在を基準に定めている国があるということです。

ただ前述したとおり、日本は居住者・非居住者判定に183日ルールの規定はなく、

上記に述べた「住所がどこにあるか」を客観的事実に基づいて判断することになります。

 

住民票が日本にある=居住者?

「住民票が日本にあるので私は居住者でしょうか?」

といった質問も多いのですが、

前述したとおり日本の居住者・非居住者判定は客観的事実に基づいて総合的に判定されることになるため

住民票が日本に置いてある形式的なことだけで居住者認定されることはありません。

 

まとめ

日本の非居住者の条件である『「住所」がどこにあるかはどう判定されるか』を説明しました。

非居住者の条件を満たしていても、

所得の種類によっては国内源泉所得となり日本での納税が必要となりますので、

心配な方は個別相談・メール相談でご相談ください。