Last Updated on 2021年6月9日
目次
消費税の国内取引判定の原則
原則として
- 売り手がモノを引き渡す場所
- 売り手がサービスを提供する場所
が国内であれば「国内取引」として判定され、日本で消費税が発生します。
しかし、近年ではデジタル取引の増加が著しく、とりわけ国境を越えるネットサービスについては
「売り手がサービスを提供する場所=サービスが消費される場所」
と言えないケースも多くなりました。Amazonの電子書籍販売などが分かりやすいですね。
そこで、一部の国境を越えるネットサービスについては、
「売り手がサービスを提供する場所」ではなく、
「買い手がサービスの提供を受ける場所」が日本であれば消費税が課されることになりました。
この改正は平成27年10月に行われています。
電気通信利用役務の提供(ネットサービス)とは
先ほど「一部の国境を越えるネットサービス」と説明しましたが、
これらは国税庁等では「電気通信利用役務の提供」と難しく説明されています。
例えば、以下のサービスです。
- インターネット等を介して行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲ ームなどの様々なアプリケーションを含みます。)の配信
- 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースや利用させるサービス やクラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
- インターネット等を通じた広告の配信・掲載
分かりやすい具体例としては、海外AmazonからのKindle本購入、海外の動画販売サイトからの動画購入、海外クラウドストレージサービスの利用、海外の広告配信サービスの利用が挙げられます。
インターネットを通じて、直接提供されるサービスというイメージですね。
従って単なる通信手段である電話やFAX、インターネット回線の利用は「電気通信利用役務の提供」に含まれません。
事業者向けの電気通信利用役務の提供とは
上記で挙げた電気通信利用役務の提供は、
- 事業者向け
- 消費者向け
に区分されます。
実際は、明らかに事業者向けとされているサービス以外は消費者向けに区分されます。
この記事では、事業者向けを説明します。
事業者向けの電気通信利用役務の提供とは、例えば以下のものが挙げられます。
- インターネット上で広告配信を提供するサービス
- インターネット上でゲームソフト販売場所(プラットフォーム)を提供するサービス
- 事業者に限定されたクラウドストレージサービス
消費税は誰が納めるのか(リバースチャージ)
上記で挙げた事業者向けの電気通信利用役務の提供サービスの場合、
誰が消費税を納めることになるのでしょうか。
一般的に考えれば、サービスを提供した国外の事業者自らが日本に消費税を納めることになりそうです。
しかし、実際は
サービスの提供を受ける(対価の支払いをする)国内の事業者が、消費税を代わりに預かって税務署へ納める
ことになるのです(下記図)。
この支払側が消費税を預かって納める方法を、「リバースチャージ」と呼びます。
この方法は、国内事業者が消費税を正しく認識して納める必要があるため負担が重いです。
そこで、
リバースチャージの対象となる取引をする国外事業者は、あらかじめ請求書にその旨を記載する義務があります。
例えば、Facebookの広告配信はリバースチャージ対象の取引ですが、
請求書には、以下の通り記載があります。
このルールによって、国内事業者は処理に迷うことが少なくなります。
課税売上割合が95%以上の場合には当面影響なし
上記のリバースチャージは、当面の間、
課税売上割合(全体の売上のうち、課税対象となる売上(免税含む)の割合)が95%以上であれば行う必要はありません。
つまり、国内での売上がほとんどである事業者は
今まで通り、Googleの広告費などの国境を越えるネットサービスは国外取引として「対象外」にすれば問題ありません。
リバースチャージが関係するのは課税売上割合が95%未満になる可能性のある
医療、不動産などの業種が多いでしょう。
ただし課税売上割合が95%以上になるかどうかは事業年度中に分かるものではなく、
たまたま非課税取引が多く95%未満となる可能性も0ではありません。
したがって、国境を越える電気通信役務に関する支払いは、会計ソフト上で区分してしておくことをお勧めします。
まとめ
平成27年10月より施行された国境を超えた電気通信利用役務の提供に係る消費税(リバースチャージ方式)についておさらいしました。
ここ近年インターネットによって国境を超える取引が当たり前となり法の整備が急速に進んでいる印象を受けます。
年度末に慌てないためにも該当しそうな取引は事前に整理しておくことが重要です。