個人輸出事業を行っている方が押さえておきたい論点ー消費税還付、課税期間の特例

Last Updated on 2017年11月29日

個人で輸出を行う人が増加

昨今、Amazonやe-Bay、タオバオなど大手ECサイトで自分のショップを持ち個人輸出をすることがとても容易になりました。

会社員の副業としても人気のある個人輸出ですが、知っておかないと損する制度があります。

それは、消費税還付課税期間の特例制度です。

消費税の基本的な仕組み

消費税の納付額は、預かった消費税から支払った消費税を差し引くことによって計算します。

例えば、国内で卸売業を営む事業者の場合、50円の商品を仕入れて、100円で国内にて販売した場合には納めるべき消費税は以下のように計算します。

預かった消費税{8円(100円×8%)}- 支払った消費税{4円(50円×8%)}=4円

輸出を行った場合の消費税の還付とは?

一方、商品を国内で仕入れて、海外に輸出する場合には消費税はかかりません。つまり預かる消費税は0円となります。

この場合、

預かった消費税0円 – 支払った消費税{4円(50円×8%)}= ▲4円

となり、支払った消費税だけが発生することになります。

この▲4円は、消費税の申告を行うことにより還付を受けることができます。

これが輸出を行った場合の消費税還付の仕組みです。

消費税還付を受けるためには「課税事業者」になることが必要

消費税還付を1期目から受けるためには、一つ手続きが必要です。

それは、「消費税の課税事業者選択届出書」という書類を、第1期の末日までに税務署に提出することです。(2期目以降はその期の始まる前日まで)

この書類は、消費税の納税義務がある「課税事業者」になることができる書類です。

どういうことか、説明します。

まず、消費税の納税義務は前々期の売上高が1,000万円超であった場合に発生するため、基本的に第1期目・第2期目は消費税の納税義務は免除されます。

つまり「納税義務がない=申告もすることができない」となり、たとえ還付が発生していても還付を受けるための申告ができないのです。

そのため、税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出することにより、自ら納税義務のある消費税の課税事業者になる必要があるのです。

ただし、もし1期目に国内でも売り上げが発生し、その結果還付ではなく納付税額が発生した場合には、届出書を提出しているので1期目でも消費税を納めなければいけません。

1期目から消費税の課税事業者になるかどうかは、将来のビジネスプランを考えた上で慎重に選択しましょう。

資金繰りに有利、「課税期間の特例」とは

消費税の課税期間は原則1年間(個人の場合には、1月1日~12月31日)です。

1年分の消費税は、翌年3月末までに申告・納付します。

この課税期間は、特例が認められていて1月ごと又は3月ごとに短縮することができます。

例えば1月ごとに課税期間を短縮した場合には、1月分の消費税は3月末までに申告・納付、2月分の消費税は4月末までに申告・納付・・という形で毎月申告・納付手続きを行うことになります。

輸出事業によって消費税の還付が発生している場合にこの特例を利用することに意味があります。

なぜかというと、原則だと1年に1回しか還付を受けることができませんが、この特例を利用すると1月ごと、又は3月ごとに還付を受けることができ、資金繰りに有利になるからです。

(ただし、国内売上もある月などは納付税額が発生する場合もあるので注意です)

この課税期間の特例制度を1期目から利用するためには、第1期の末日までに「消費税課税期間特例選択届出書」を税務署に提出しなければなりません。(2期目以降はその期の始まる前日まで)

将来の資金繰りプランを考えた上で提出を検討しましょう。

まとめ

個人で気軽に輸出が始められるような時代になりました。

一方で、上記のような税金に関する知識が不足していたことにより損をしている方も多いのではないでしょうか。

上記の知識を持ち合わせているだけで利益率や資金繰りが改善する可能性もあります。

これから個人で輸出を始められる方、是非参考にしてください。

輸出の他海外取引が頻繁に発生すると税務上検討しなければならない項目(外国税額控除、租税条約、源泉税など)が増えます。

ご不明な点はスポットサービスにて税務相談を承ります。