Last Updated on 2025年4月7日
「国際税務」と聞くと、何やら難しいことのように聞こえるかもしれません。
実際、本屋さんに行くと専門家向けの、専門用語でびっしりの分厚い本が並びます。
そのため、「国際税務は大きな会社だけが関係することであって、個人や小さな会社は関係ない」と思われる人もいます。
この記事では、その誤解について書きます。
目次
国際税務は、個人や小さな会社も関わる問題
国際税務とは、簡単に説明すると複数の国にまたがる取引に関わる税金の問題を取り扱う分野です。
この定義からわかるように、決して海外に拠点を構えるような大きな会社だけでなく、個人や小さな会社も関わることなんですね。
特に近年のように国境を越えて仕事をすることが容易な状況では、
- 海外に拠点がないけど、海外企業に向けて取引する小さな会社
- 海外に住みながら日本企業に仕事をするフリーランス
- 日本に住みながらリモートワークで海外企業の仕事をする外国人
が増えている感覚があります。
実際、私に相談される方は上記の状況の方が多いです。
どんな問題に直面する?
では、実際にどんな問題に直面するのか。寄せられるご相談の多くは以下に関係することです。
二重課税
一番多いのが二重課税の問題です。
国境を越える取引は、「居住地」(住んでいる(所在する)ところ)」と「源泉地(所得が発生した場所)」が異なるため、いずれの国でも税金がかかる二重課税が発生しやすいです。
それを回避するのが
- 租税条約
- 外国税額控除
なのですが、それぞれ適用できる条件が異なります。
海外に拠点がなくても、取引をするだけで租税条約の届出書のフォームを求められ、困る会社さんも多いです。
二重課税が発生する仕組みとその回避方法の基本的な考え方を知っておけば、いざというときに慌てません。
源泉徴収
海外に住む非居住者の方からの相談で一番多いのが源泉徴収です。
具体的には、
「日本企業へ請求する際に、源泉徴収をされている。この税率は正しいのか?軽減はできないのか?」
というご相談ですね。
これも、非居住者の源泉徴収の基本ルールがあるので押さえておきたいところです。
源泉所得税の免除や軽減を受ける場合には、取引先である日本企業を通じて租税条約の届出書を提出することになります。したがって、できれば取引前に日本企業とすり合わせをしておきたい部分です。
消費税
日本、海外いずれの事業者さんからも相談が多いのが消費税です。
海外に住む方からは、海外から日本の企業向けに仕事した場合に消費税を上乗せすべきかどうか、というご相談が多いです。
日本企業さんからは、国境を越える取引の中でもネット広告費(Google、Facebook等)の消費税の取り扱いのご相談が多いです。
消費税も、「基本」を理解しておくことが大切です。
消費税の区分はフローチャートで考えることが大切で、
「まずは課税対象になるのか?(国内取引なのか?)」
の判定が重要です。
個人や小さな会社は、国際税務の「基本ルール」だけ押さえればOK
以上、個人・小さな会社でも国際税務は関係あるということと、直面することの多い問題を挙げました。
国際税務は大きく分けて「基本ルール」「租税回避防止ルール」に分かれるのですが、個人や小さな会社は「基本ルール」さえ知っていれば問題ありません。
基本ルールとは、上記で書いたようなことです。二重課税や源泉徴収、消費税などです。
一方、租税回避防止ルール(タックスヘイブン税制、移転価格税制等)のほうは個人や小さな会社にとって問題になることは少ないです。
したがって、個人や小さな会社はまず、基本ルールを押さえておくことが大事です。
当事務所は、個人や小さな会社の国際税務の相談を頻繁に受けています。ご不安な方は個別相談、メール相談などをご利用ください。